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Foo Fighters

掲載: 2002/10/31
更新: 2003/02/13
ソース: 『bounce』誌 237号(2002/10/25)

彼らの作品に対して、疾走感と豪快さの説明はもはや必要なかろう。ラフさを全面に出したサウンドから浮かんでくるのは、ひとつのキーワード──『One By One』。それは個と個を結ぶコミュニケーションの復活!!

文/田中 大

答えは簡単。音楽は楽しむもの



フー・ファイターズに新たな春到来! いや、これはむしろ真夏のむせ返る生命の匂いか。3年ぶりとなる新作『One By One』は強烈なエネルギーをブチまける。脈打つビートは永遠のロックンロール讃歌、轟くファズ・トーンは不屈の血、全身全霊で絞り出す声は無礼講のカタルシス。ロックンロールを愛しさの限りに抱きしめた一枚となった。

 「俺らのいちばんいいところが詰まってると思う。ファーストからあったエモーショナルでロマンティックなものや、複雑で不協和音が多いギターとか、アグレッシヴなドラム・プレイ、あと耳と心の両方を虜にするフック(笑)。こういうのをいままでの2倍の音量でプレイしてるんだ。作りながらいちばん考えたのは、全部の曲をライヴでプレイできるものにしたいってこと。前作はメロウな曲が多かったじゃない? 自分たちのスタジオを初めて作ったってこともあって、スタジオでの実験に重点を置いたんだよね。でも、その後ツアーに2年間出てわかったのは、俺がバンドをやってるなかでいちばん好きなのはライヴなんだってことだったんだ。だからライヴでやりたくない曲をレコーディングしても意味ないって思うようになったんだよね。このアルバムの音も、時々早くなったり、間違ったり(笑)、まあ結構ラフなんだけど、そのぶん生々しいエネルギーに溢れてるんじゃないかな」(デイヴ・グロール、ヴォーカル:以下同)。

 迷いなく鳴らされているこの音からして、今作の制作はすこぶるスムーズに進行したかのように思える。だが実際は、一旦レコーディングしたものを無情にもすべてボツにしているのだ。なぜ?

 「作業を始めたのは去年の10月なんだけど、最初に考えたのは〈壮大なサウンドを実現したい!〉ってことでね。いろんな機材を試したりしたよ。でも、そんなこと延々3、4か月やってもぜんぜん冴えなかった。最終的に気づいたのは、壮大なサウンドってのはミュージシャン自身や、プレイ自体に宿るもんなんだってこと。あと、部屋の中にずっといて陽に当たらないのは良くない。俺、どんどん陰気になっちゃって(笑)。だから話し合って、充電期間をおくことにしたんだ。で、みんなそれぞれ別プロジェクトに入って、俺はクイーンズ(・オブ・ザ・ストーン・エイジ)でドラムを叩いたわけ。違ったことやって良かったよ。〈自分はなんで音楽をやるのか?〉ってことが改めてわかったから。答えは単純さ、音楽は興奮するため、楽しむためにやるんだ」。

 デイヴがクイーンズでドラムを叩いていたのにはこういう事情もあったのだ。しかし、ニルヴァーナ消滅から力強く立ち上がり、堂々たる足跡を刻み続けてきた彼からすると、こういう煮詰まり方は異例のことだったのでは?

 
アダム・キャスパーとバンド自身のプロデュースによって制作されたフー・ファイターズの4作目『One By One』(RCA/BMGファンハウス)

「うん。こんなの初めて。ニルヴァーナでドラム叩くのは俺にとって凄く自然なことだったし、フー・ファイターズのファーストなんか5日間で録っちゃったからね。こんなに不安になったことはいままでなかった。〈老醜を曝すくらいなら若くして死にたい〉とかよく言うじゃない? 〈俺もロックやるには歳取り過ぎたのかな?〉ってホント思ったよ。現役退いて猫のエサのCM音楽でもやろうかって考えたくらい(笑)。でも、スランプを乗り越えたことで、〈俺は死ぬまでロックをやり続けるんだ!〉って再確認することができたね。音楽って、人生の全部ってことではなくて人生の一部なんだと思うよ。そういう風に気楽に考えるようになったら、死ぬまでできそうな気分になってきた(笑)。ニール・ヤングとかトム・ペティも気楽に構えてるからこそ、いい音楽を生み出し続けられてるんじゃないかな。彼らも俺と同じで、30過ぎに更年期障害みたいなもんを体験したのかもね(笑)」。

 話の饒舌さから、最近の彼の充実ぶりがよくわかる。そしてその自信がサウンドだけでなく歌詞にまで及んでいるのも、非常に目を惹く変化だといえよう。

 「歌詞が気持ち良く書けたのも実は初めて。俺って結構内面を隠すほうだから、あんま歌詞を書くのは自信ないんだよね(笑)」。

 追い込まれた状態で歌詞を書き上げることが多いせいか、自分がなにを歌ったかを後々冷静になって初めて認識するパターンが多いらしい。そんな事情もあって、歌詞について具体的に言及するのを概して苦手としているデイヴ。だが、今作に関してはおぼろげながらも一貫したトーンを見い出しているようだ。

 「ロマンティックな気分が凝縮されてるのかな。それはやっぱり歌詞を書いてたときの俺の気持ちだよ。自分を愛してる人との距離とか、情熱が反映されてるね。いまアルバムを思い返してみると、冒頭はなにかを探し求めてる状態で、最後はなにかを見つけたんだけど、ふたたびなにかを探し求めてる状態に行き着いてるのかな。たぶん俺は満足してるんだけど、まだもっともっと行きたいって気持ちがあるんだろうね」。

キッズの頃に持っていたエネルギー


さらに本作については“Tired”でブライアン・メイが参加しているのも見逃せないトピックだ。彼との共同作業は映画「MI:2」のサントラ以来となる。

 「ドラムスのテイラー・ホーキンズが以前からブライアンと知り合いだったんだ。俺たちがロンドンでライヴをやったときも、ブライアンがロジャ−・テイラーまで連れてきてくれてクイーンのカヴァーをしたこともあった。あっ! いま思い出したんだけど、 ブライアンと初めて会ったのって92年。ニルヴァーナの頃、MTVの授賞式だよ!」。

 インタヴュー中、ソファーにゆったりもたれながら話していたデイヴなのだが、ここで突如身を乗り出した。

 「“Lithium”をプレイしたあとに機材をブッ壊して、そのときクリス(・ノヴォゼリック)がベースを高くぶん投げたんだよね。でも、ベース取り損ねて頭に直撃(笑)。で、ステージ降りてみたらクリスが行方不明なんだよ。俺たち、奴がどこかで頭から血を流して失神してるんじゃないかって慌てて探し回ったんだ。そして、とある部屋を覗いてみたら、なぜかクリスがブライアンとシャンパンで優雅に乾杯してたっていうさ(笑)」。

 ブライアンの話となると、一際目を輝かせていたデイヴの姿が印象深い。その様がまさに今作を象徴するストレートな原動力を示しているように思うのだ。

 「ガキんときに憧れてたミュージシャンに会うと、なにか忘れてたものが戻ってくる感じってあるんだよね。デヴィッド・ボウイやイギー・ポップと会ったときもそうだった。あと、俺としてもいちばん嬉しいのは、このアルバムを聴くと、キッズの頃のエネルギーが戻ってくる感じがあるんだ。なんか初めてバンドを組んだときみたいなさ。ブライアンといっしょにやって、自分のギター・プレイがいかに子供じみたものかが身に染みたってのもあるんだけどさ(笑)」。

 8年目に掴み取った、これぞ最高傑作。疑いようもない。実感させられるのはフー・ファイターズは依然気持ちいいほど悪ガキだということ。そして、改めて思う。ロックンロールはまだまだ元気だと。『One By One』はそんな幸福な興奮を届けてくれる一枚だ。

文/岩田真也

7年間に渡る、フー・ファイターズ・ロックンロール・ショウ!!

Foo Fighters

Roswell/Capitol(1995)
唄と演奏=デイヴ・グロール。ニルヴァーナのドラムスが最前線に出てきた衝撃たるや!! “I'll Stick Around”が聴く者の動脈をビクリと律動させるのは、荒々しい音作りのせいでもあり、このバンドが生まれた因果を匂わせるからでもある。ハードな曲はもちろんのこと、簡素な佇まいの“Big Me”に強く惹きつけられて。



The Colour And The Shape

Capitol(1997)
前作から2年、幾多のライヴを経て産み落とされたアルバム。しかしドラムスの途中脱退により、結局はデイヴがほとんどを叩いたのだから、楽団を維持するとは難しきことなり。それでも、〈もはや俺らはワンマン・ユニットではないぞ〉とばかりにじっくり練り込まれた楽曲の連打。“Monkey Wrench”が眩しい輝きを放つ。



There Is Nothing Left To Lose

RCA(1999)
パット・スメアも後任のギタリストも去った3枚目、さらにはレーベル移籍。こんな状況ながら、音は着実に安定に向かっているのは流石。冒頭の激歪ギターに胸が躍るも、全体としてはポップな仕上がり。しかし、軟弱さは微塵もなく、太く温かい響きに満ちている。新章の始まりを告げた力作。タイトルも意味深長。

文/村上ひさし

〈Not Grunge!!〉──フー・ファイターズの音楽履歴書

 デイヴ・グロールがニルヴァーナ出身ということから、オルタナ・バンドと括られがちなフー・ファイターズだけれど、実のところはパンクやハードコアからガレージ、ヘヴィーメタル、ニューウェイヴまでと、彼らの持っている音楽性は驚くほど広範囲に渡っている。そのもっともいい例が、このあいだもドラマーとして来日を果たしていたデイヴのクィーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジへの参加だが、最近だとそのほかにもデヴィッド・ボウイの最新作『Heathen』にも彼はギターで参加していたり、ナンセンスなギャグをかますコミック・バンド、テネイシャスDに、こちらもギターとドラムスで参加。またことあるごとに大きな影響を受けたとデイヴが名を挙げるブラック・サバスに関しては、トニー・アイオミのソロ作にその他大勢のミュージシャンと共に顔を出しているほか、ヴァービーナというトリオのプロデュースも手掛けていて、こちらはちょっぴりグランジ風。プロボットというメタルとパンクを掛け合わしたサウンドのサイド・プロジェクトも進行しているはず。さらにほかのメンバーも多彩なバックグラウンドから集まっていて、ベーシストのネイト・メンデルの出身バンドは堅実ロックのサニー・デイ・リアル・エステイトだし、元ギタリストのパット・スメアはLAパンクのジャームスから、現ギタリストのクリス・シフレットはハードコア・パンクのノー・ユース・フォー・ア・ネームからの転身組だ。
クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの2002年作『Songs For The Deaf』(Interscope)
テネイシャスDの2001年作『Tenacious D』(Epic)
トニー・アイオミの2000年作『Iommi』(Divine/Priority)


サニー・デイ・リアル・エステイトの95年作『Sunny Day Real Estate』(Sub Pop)
ジャームスのベスト『Germs(MIA)- The Complete Anthology』(Slash)
ノー・ユース・フォー・ア・ネームの97年作『Making Friends』(Fat Wreck Chords)

文/田中 大

お楽しみ映像が満載のDVD付きスペシャル・パッケージも登場するぞ!!


毎回、なにかとプロモ・クリップが話題となるフー・ファイターズ。過去最大のヒットはやはり“Big Me”だろうか。mentosのTVCMをパロディー化したあの映像はいまだ鮮烈だ。聞くところによれば〈プロモ・クリップによるイメージ先行への反発〉ゆえに、彼らは過剰なまでのアホっぽさに徹してきたのだという。そんななかで、今回シングル・カットされる“All My Life”のプロモ・クリップは、彼らとしては異色作だといえよう。シンプルに演奏シーンだけを捉えていて、凄まじくカッコイイ。

 「曲自体にパワーがあるから、パフォーマンスそのものを反映するのが重要だと思ったんだ。これまでは、プロモ・クリップで俺たちにユーモラスなイメージを持っていた人がいざライヴに来ると、汗でドロドロになりながら叫んだりしてる様子を観て唖然としていたと思うんだけど……。まあ今回は、そういうことはないだろうね(笑)」(デイヴ)。

 

11月6日には、このプロモ・クリップとライヴ映像を収録したDVD付きスペシャル・パッケージのリリースが予定されている。限定盤なのでお早めに!

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