ホームテキスト
第98回 ─ KANSAIMPACT REPRISE !? -LIVE REPORT VERSION-


掲載: 2008/11/13

 関西アンダーグラウンド・シーンを代表するイキのいいバンドたちが、この秋、続々と東京襲来! bounce.comでは、そのなかでも特に濃ゆ〜い面々が集結した二夜をピックアップしてレポートいたします!!

文/土田 真弓

夢中夢 「反復する世界の果ての夢中夢中夢中夢中夢中夢中夢中夢......∞引き裂いて」 @ 池袋・手刀 2008年10月26日(日)

写真/RiNA

 SEとして流れ始めた「ファイナルファンタジー」のオープニング・テーマと共に、頭頂部にファミコン本体が固定されたヘッドギア+マントといういでたちで登場したサカモト教授。ファミコンにカセットが挿入されると、そのゲーム音楽を鍵盤で完璧に弾きこなすという芸当を飄々と披露した彼に続き、いよいよ夢中夢の6人が現れた。

 
写真/RiNA

 新作『ilya -イリヤ-』と同タイトルのインストゥルメンタルで幕を開けたステージは、静寂を写し取ったかのように繊細なヴァイオリンが混沌に向かって徐々に加速し、フル・スピードに到達する寸前で“反復する世界の果てで白夜は散る”へとスイッチ。物語の語り部はミニマルなピアノに交代……した瞬間、ギタリスト・依田のデス声が可憐な音階を粉砕し、さらに真っ白なドレスに身を包んだヴォーカリスト・ハチスノイトのソプラノ・ヴォイスが、カオティックな音世界を救済するかのごとく崇高な美しさをもって響き渡る。ブレイクビーツとブラスト・ビートのあいだを激しく振幅しながら不穏に走るドラム、挑むように追随するベース――個々のパートが縦横無尽に交錯することで構築される荒涼とした音世界は、会場内をあっという間に覆い尽くす。

 「ありがとう!」と、曲間に人懐っこく叫んだ舌の根も渇かないうちに、また凶暴なシャウトを繰り返す依田……続くは荘厳なプログレッシヴ・ゴシック・メタル“眼は神”だ。そして“僕たちの距離感”まで一気に駆け抜けた後は、幾重にも重なり合うディレイが深遠に広がる“塵にすぎない僕は塵に返る”へと、幻想世界は刻々とその表情を変化させてゆく。

 
写真/RiNA

 メタル、ハードコア、クラシック、アンビエント、ミニマル・ミュージックなどのエッセンスが混在する小楽章で編まれた組曲のように、目まぐるしく転調しては独創的な心象風景を切り拓いていく夢中夢の楽曲。轟音のなかに浮かび上がるのは、世界の終焉と再生を思わせる壮大なスケールのダーク・ファンタジアだ。

 
写真/RiNA

 殺伐とした幻想が渦巻く世界観を体現するプレイヤー陣のエモーショナルなパフォーマンスと、その中心でトランシーに歌い続けるハチスノイトの存在感。生身の彼らが放出するエネルギーは混沌のなかで果てしなく膨れ上がり、ラスト手前の“火焔鳥”でとうとう爆発。依田やハチスに比べてやや控えめに見えたベースの眼鏡男子、ハヤシまでもが暴れながら天井によじのぼり始め、そのままラストの“楽園”へと雪崩れ込む。観客たち(ほとんど男子)もステージ前に殺到して怒号を上げ、会場内が異様な興奮状態に上り詰めたところで本編が終了した。

 アンコールは“斬鉄”……だったのだが、レポートを書くつもりで観ていたにも関わらず、意識が完全に飛んでしまったため(本編で燃え尽きていた)、正直言ってほとんど覚えていない。ただ、夢から醒めたような気分で帰路についたことだけが、妙に冴え冴えと頭に残っている。

▼夢中夢の作品
9月にリリースされたニュー・アルバム『イリヤ -ilya-』(GYUUNE CASETTE)
2006年作『夢中夢』(GYUUNE CASETTE)


neco眠る 1st ALBUM RELEASE PARTY in TOKYO @ 新大久保・EARTHDOM 2008年11月9日(日)

写真/竹西優子


■赤い疑惑 (From 東京)

 
写真/竹西優子

 フロアをデモ風に練り歩きながら登場したのは、アクセル長尾(ヴォーカル/ギター)、松田クラッチ(ベース/コーラス)、沓沢ブレーキ(ドラムス/コーラス)といったコミカルなネーミングからは想像できない……いや、ちょっとは想像できるかもしれない社会派(?)ロックを鳴らすスリーピース・バンド、赤い疑惑。〈赤い疑惑がただいま参上〉といったキメ台詞が幕開けにピッタリな“東京のボンボン”で始まったステージ(闘争)は、「俺たちの生き様を見てくれよ!」という宣言も含めてどこか軟弱な佇まい……なのだが、ストレートなパンク・サウンドとラップ混じりのヴォーカル、掛け合いのコーラスの不器用なミクスチャーぶりが何だか逆にグッとくる。社会的弱者の叫びを赤裸々に綴ったいなたいロックンロールで、満員の会場内を存分に温めてくれた。

 
■オシリペンペンズ

 
写真/竹西優子

写真/竹西優子

 ある意味、この人たちは見た目からかなりの確率で音楽性を想像できるんじゃないだろうか? 関西アンダーグラウンド・シーンの最強バンド=オシリペンペンズは、初っ端からギターとドラムのみでカオティックなグルーヴを生み出し、会場を不穏極まりないサイケデリック地獄へと突き落とす。ヴォーカル・石井モタコによる「お前が悪い!」と畳み掛ける絶叫も、間違いなくトラウマになりそうなインパクトだ。しまいには、喉に手を突っ込んだモタコがフロアに大きく乗り出し、まさか……という予想どおりに胃液を吐き出すというパフォーマンス(?)も飛び出し、フロアはもう何やらわからない液体まみれ。かと思えば、ギターが刻む祭り囃子風のリフに合わせて観客が痙攣気味に踊りまくる、という真の意味でのサイケ状態が目の前で繰り広げられたりと、目と耳はステージに釘付けながら、あっけに取られているんだか、魅入られてるんだかまったくわからないままに通過していった30分間だった。

 
■younGSounds (From 東京)

 
写真/竹西優子

 三番手は、イルリメ、やけのはら、idea of a joke、KIRIHITOの面々から成るやたら豪華な6人組バンド、younGSounds。パンク、ハードコア、ヒップホップ、ダンス・ミュージックがアグレッシヴにぶつかり合うサウンドと、3人のMCがエネルギッシュに煽りまくるステージングにフロアのヴォルテージは急騰。前方のモッシュ集団に次々と観客が飛び込んでいったかと思えば、ダイヴァーが天井を滑るような勢いで後方へ転がり出てくる(この会場は、観客の頭上にダイヴすると天井にぶつかりそうなくらいに天井が低い)。ここしばらくのライヴで一番とも言える圧倒的なグルーヴに巻き込まれ、筆者のテンションも激アガリ! どこまでもアッパーに駆け抜けたステージ後は、会場のあちこちで「凄い!」「ヤバイ!」といった声が飛び交っていた。今年はこの日が最後、かつ来年以降は特にライヴの予定がないというのが残念だけど、どうやら大人の事情が許せば初音源も発表される模様!?

▼文中に登場したアーティストの作品
10月10日にリリースされた、赤い疑惑のニュー・アルバム『東京ファミリーストーリー』(赤いプロダクション)
5月にリリースされた、オシリペンペンズのアルバム『ミクロで行こう』(macaroni)




■DODDODO

 
写真/竹西優子

 ゴス・メイクさえもキュートな関西ブレイクコア界の看板娘、DODDODO嬢。ロックもヒップホップも民族音楽もサンプリングし、摩訶不思議に繋ぎ合わせたトラックに合わせてデス声で歌う(叫ぶ)彼女の姿は、何だか暴れん坊の猫みたいだなぁ、という印象。途中、サンプラーの電源が落ちるというハプニングに見舞われたが、まったく動じることなく「ワン! ツー! ワン、ツー、スリー、フォー! でーんーげーんー、おーちーたー!!」と三歳児クラスのアピールをしてみたりと、微笑ましいほどのマイペースぶりだ。どこか凶暴なムードを漂わせつつ、あくまでもポップかつキャッチーに響くビートに包まれていると、いつの間にか牧歌的な気分に……。このカラフルな音世界は、女子の特権なのではないでしょうか。

 
■neco眠る

 
写真/竹西優子

 ラストはいよいよ本日の主役、neco眠る。恒例のオープニング曲とも言える“UMMA”の分厚いギター・フレーズが鳴り響いた瞬間、会場からは大喝采が沸き起こる。続く鍵盤ハーモニカのファニーなフレーズに合わせて、観客は思い思いのスタイルで踊り出す。

 
写真/竹西優子

 お囃子ビートに彩られたフロアは、異様にアッパーなお祭り広場に様変わり。ぐるぐる回転しながら踊り狂う観客たちの頭上を、ダイヴァーたちは浮いたり沈んだりしながら豪快に泳いでゆく。パンク、ハードコア、スカ、サンバ、ダブ、エキゾなどが盆踊りを囲んで仲良く手を繋ぎ合う――そんな和製ダンス・ミュージックがもたらす興奮は、日本人であれば決して抗うことができないもの。加えて、音源よりも強烈に施されたダブ・ミックスがフロア全体を覆うグルーヴをより立体的に押し広げ、集まった老若男女(本当に層が幅広かった)たちをグイグイとモッシュ・ピットのなかへと引き込んでいく。

 
写真/竹西優子

 本編の最後は、カーニヴァル感満載のコミカルなダンス・ナンバー“OBA TUNE”で締め。止むことのないアンコールの声に、メンバーは再び登場……したはいいものの、ギターの森が、毎度のことながらすでに曲を出し切ってしまったと恥ずかしそうに告白。結局は、BPMを上げた“ENGAWA DE DANCEHALL”を披露し、リズミカルな高速ビートで観客全員の意識を忘我の境地に送り届けてこの日のパフォーマンスは終了した。集まったお客さんのエキセントリックな雰囲気も含め、濃厚な関西シーンの一端を垣間見ることのできた一夜だった。

▼文中に登場したアーティストの作品
DODDODOの2006年作『ドの道ドッドド』(Power Shovel Audio)
9月にリリースされた、neco眠るのファースト・アルバム『ENGAWA BOYS PENTATONIC PUNK』(DE-FRAGMENT)


この記事をflogに追加
この記事をはてなブックマークに追加

テキストへ戻る


この記事にはトラックバックが可能です
この記事のトラックバックURL:
http://www.bounce.com/tb.php/112168

複数キーワードによる検索も使えます!!