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ナンバーガール

掲載: 2003/01/23
更新: 2003/02/13
さよならナンバーガール!!!!!!

2002年11月30日、解散。
最後まで、最強のライヴを見せてくれたナンバーガール。

bounce.comでは今回、ラスト・ライヴ収録のアルバム『サッポロOMOIDE IN MY HEAD状態』の発表を記念し、札幌・ペニーレーンでの「ラスト・ライヴレポート」を当日の秘蔵写真(!)も含めて大公開。さらに、音楽ライターである北沢夏音氏&ナンバーガールを追い続けたbounce担当が、その活動の軌跡、影響力などを振り返る惜別対談企画「センチメンタル過剰な対談」もお届けします。最後まで、<ガッツリと>ご覧ください。

文/久保田泰平

PERFORMANCE
2002年11月30日(土)札幌・ペニーレーン


ナンバーガール、その最後の6時間を追いかけた(森本レオ調で読んでいただきたい)

 14:30 メンバーが会場入りをする。ほどなくして、田渕ひさ子が外へ食事をしに、アヒト・イナザワはTVでJリーグ観戦を、楽屋では中尾憲太郎28才がソファーに寝転び、向井秀徳がギターの音合わせを始めた……いつもと変わらぬ6時間前。

 
会場する入りするメンバー


17:30 メンバー4人揃ってのリハーサルを手早く終え、しばしの休憩。ツアー・スタッフの粋な計らいで、4人にプレゼントが渡される。向井にはフェンダー・ジャパンのギターが贈られた。メンバーは普段となんら変わらぬ様子なのだが、メンバーと記念撮影をするスタッフや、すでに目を潤ませる女性スタッフ――周囲の雰囲気で、なにげに〈最後〉の空気が漂う。向井が呟く――「大声で、叫ぶように歌うことは、このあと一生ないでしょうね」。それが……3時間前。

 
(上から時計回りに)リハーサル中の4人、楽屋にてヒゲを剃る向井秀徳、サインに応じる田渕ひさ子、会場外でサインに応じるアヒト・イナザワ


18:30 開場の時間がやってきた。キャパシティー500人強の会場は、すぐさまファンで埋め尽くされる。〈早く始まってほしい〉と急く想いと、メンバーを待ちながら徐々に気持ちが高まっていくこの時間を惜しむ想い。ファンの想いが複雑に交錯しているであろうなか、会場に(テレヴィジョンの)“Marquee Moon”が流れた、2時間前。


PERFORMANCE
2002年11月30日(土)札幌・ペニーレーン


19:00 1曲目の“I don't know”が始まるやいなや、会場内の温度が一気に上がる。サウナ風呂を除けば、札幌でいちばん暑い場所に違いない。数曲を終え、煙草を片手に向井がしゃべり始める。いつも通り、和やかな笑いを誘うものだ。ただ、ファンの声援は少々違った。〈ありがとう〉という言葉が多く飛び交う。熱気にやられて意識を失うファンが、1人、2人と運ばれた、1時間前。

 


20:00 ライヴも中盤から後半へ。ここまでのセット・リストも、向井のMC同様に〈最後用〉として組まれてはいなかった。いつでも最新の状態がいちばんカッコイイ――日々更新を続けてきたナンバーガールらしい姿がそこにはあった。そして……15分前。

 


PERFORMANCE
2002年11月30日(土)札幌・ペニーレーン



20:45 「自分が敬愛しているブッチャーズやイースタン・ユースを生んだ札幌で最後のライヴをできることが嬉しい」――解散発表後のツアー、そのMCで〈解散〉に触れることのなかった向井が話した。本当にこの日が最後のステージだという空気が、会場内を包む。そして……「95年夏から自力を信じてやってきました……福岡市博多区からやって来ましたナンバーガールです。ドラムス、アヒト・イナザワ!」。ドラム・ロールの音が掻き消されるほどの大きな歓声が上がった。メンバーもファンも、このうえなくハイなテンションで“omoide in my head”を、最後は“Iggy Pop Fan Club”で締めくくった。そして、いま……。

 ステージ裏でメンバーそれぞれに〈ありがとう〉と握手を交わす向井。いま、ナンバーガールの歴史が終わったことを実感している。
          

 
▼ 当日のライヴを収録した2枚組アルバム『サッポロOMOIDE IN MY HEAD状態』。
その全収録曲をご紹介。

 (DISC1)
1. I don't know
2. 鉄風鋭くなって
3. ZEGEN VS UNDERCOVER
4. TATTOOあり
5. 透明少女
6. はいから狂い
7. URBAN GUITAR SAYONARA
8. NUM-AMI-DABUTZ
9. delayted brain
10. 性的少女
11. CIBICCOさん

 (DISC2)
1. SAPPUKEI
2. U-REI
3. MANGA SICK
4. Sentimaental girl's violent joke
5. DESTRUCTION BABY
6. YOUNG GIRL 17 SEXUALLY KNOWING
7. TRAMPOLINE GIRL
8. 日常に生きる少女
9. OMOIDE IN MY HEAD
10. IGGY POP FANCLUB

センチメンタル過剰な対談 〜ナンバーガール解散に寄せて〜
北沢夏音(音楽ライター)×久保田泰平(bounce編集部)


言葉本来の意味でインディペンデントな存在

北沢「稀にみる潔い解散だったよね。潔すぎて、惜しい。もうちょっとバンドで、世の中と取っ組み合ってほしかったなって気もするけど……」

久保田「でも、そういった取っ組み合いを、メジャーで3年間やってたってことだけでも立派だったと思うんですよ。3年間だけでも奇跡ですよ」

北沢「向井(秀徳)くんも〈残念だ〉とは言っていた。曲はあったし、もう1枚アルバム作ってからっていう気持ちもあったみたいだね。それは僕らだってすごいの作ってほしかったよって思う。……ところで、いちばん売れたアルバムってどれですか?」

久保田「いちばん最後の『NUM-HEAVY METALIC』ですよ」

北沢「それで2ケタ(10万枚)ぐらいは売れたの?」

久保田「そこまではいってないんじゃないですか」

北沢「じゃあ、ブレイクする前、一般に知られる前に解散しちゃった感じなんだね。実はまだ、知る人ぞ知る存在で」

久保田「ちょっと前にZONEにインタヴューしたんだけど、ナンバーガールを知らなかった(笑)」

北沢「そういう意味でも、ナンバーガールの解散は早すぎた感じがする。もうちょっとブレイクしてほしかったなあって気持ちはある」

久保田「うん、そうですよね」

北沢「でも、ナンバーガールの影響っていうのはこれからジワジワと表れてきて、そういったものを受け継ぐ若いバンドが出てくるんじゃないかな。まあ、もう出てきてるんだろうけど」

久保田「はっぴいえんどとかもそうなんですけど、あの人たちも世の中的にはブレイクした人たちではないですよね。でも、その後ジワジワと影響が表れてきて、90年代には尋常じゃないもてはやされ方をしましたもんね。ナンバーガールもはっぴいえんど同様に、ちゃんと洋楽とのリンクが張られているから、今後の影響力は大きいと思う。ナンバーガールをきっかけにピクシーズやフレーミング・リップスを聴いた人もいるだろうし。その逆で、そういった洋楽を聴いてた人も、ナンバーガールをおもしろがってくれたりもしてたし」

北沢「そういうバンドだから、ナンバーガールはおもしろかったんだと思う。ナンバーガールが入り口になっていろんなものにリンクできて、それでリスナーが豊かになるというか。ナンバーガール〜ダブっていう聴き方をした人もいるだろうし、じゃがたらを聴いてみようと思ってる人もいるだろうし」

久保田「フーやラモーンズのカヴァーもしてたし」

北沢「ナンバーガールの場合、いわゆるリスペクトするカヴァーっていうわけでもないでしょ。自分らのルーツを見せびらかすものでもなかったし。批評性というのとは違って、そこからもらったものをこういうふうに返すんだ!みたいなね。俺らはこう受け取ったんだけどお前らはどう思う?っていうふうに、いつも問うてた感じだよね」

久保田「問うてるけど、決して文句は言わせないぐらいの説得力があるんですよね。それはカヴァーに限らず」

北沢「〈自分たちはこうだ! 四の五の言うな!〉というのが通せたっていうのは、やっぱり志が高かったんだろうね。本当に独立していたというか、言葉本来の意味でインディペンデントな存在だったと思う、最後まで」

 
▼ ナンバーガールがリンクした洋楽、その原典たち。

 
アメリカが誇るサイケデリック・ロック・バンドの代表作。バンドのサブ・メンバー、デイヴ・フリッドマンは、『SAPPUKEI』等ナンバーガール代表作のエンジニアを務めた。
そのシャープな轟音ギター・サウンドで、80年代UKロック・シーンに鮮烈な軌跡を残したピクシーズ。ナンバーガールは「ウェイヴ・オブ・ミューティテーション」をカヴァー。
革ジャンにジーンズというスタイルで、センセーショナルに登場したNYパンクのオリジネイター。ナンバーガールがライヴでカヴァーした「アイ・ワナ・ビー・ユア・ボーイフレンド」は彼らの代表曲。
60年代、UKモッズ・シーンの代表格バンドとして活躍し、後のパンクにも影響を与えたザ・フー。ナンバーガールはライヴで「ソー・サッド・アバウト・アス」をカヴァー。



センチメンタル過剰な対談 〜ナンバーガール解散に寄せて〜


ラヴソングがなかった

久保田「向井くんは信念が強い人だなあと思いますよ。でも、その信念を成就するにあたって集まった、他の3人のことをないがしろにはできませんよね」

北沢「4人が4人で技を出し合って闘ってる〈チーム感〉っていうのかな。決して向井くんのワンマン・バンドではなかったという、バンドの魅力は大きいよね。なかでも、(田渕)ひさ子ちゃんの存在は大きかった。ひさ子ちゃんが画期的だったのは、女性ひとりっていうバンドのなかで、アイドル担当だけじゃないものを出していたところ。あのギターがないとバンドが成立しないっていうところまで完全にいってたし、可愛らしいのにそれを売りにしないし、する気さえない、まわりもそういう扱いをしない、っていうところがかっこよかった」

久保田「そう、アイドル担当を張れるぐらいなのに、扱いは男子連中と並列なんですよね。いっしょに並んだメンバーもメンバーだけに、さらにすごい!」

北沢「ギター・ヒーローでもあったんだよね。ギターをグーッと持ち上げてソロを弾くところとか、かっこよかったよね。そういう意味で、ひさ子ちゃんがロックの女性史を更新したと言ってもいいんじゃないかな」

久保田「そういえば、ナンバーガールの曲にはラヴソングがなかったですね」

北沢「〈キミとボク〉っていう歌は歌ってないでしょ」

久保田「対話っていうものがなくて、いつもどこかから眺めてる感じ」

北沢「僕が高校生のときに大滝詠一の『A LONG VACATION』が流行ったんだけど、それでラジオからはっぴいえんどの曲が流れることがよくあって。それではっぴいえんどを知ったんだけど、松本隆の視点、街を見る視点っていうのを、そんなに昔のものって意識はなくそのまんま共有できたのね。そのまんま自分の心情が重ねられた。いま自分が高校生だったら、それがナンバーガール、向井くんの視点なのかなあって。ナンバーガールって、初期の楽曲は静止している風景が多かったんだけど、だんだん動きがでてくるんだよね。たとえば、『NUM-HEAVY METALIC』のラスト“黒目がちな少女”とか、翻弄されつつも自分を見失わないでいよう、っていう気持ちで終わるというか。やっぱり世の中のほうが強いから、それに振り回されるんだけど、自分は見失わずに闘っていこうというか。飲み込まれまいとうか、抵抗してる。ナンバーガールって〈抵抗している〉感じがあった」

久保田「そういった〈抵抗〉みたいなものをパワーとして昇華していった感じですよね」

北沢「それがどんどん本物になってた感じでしょ。本物って、いるだけで周囲の人に違った景色を見せてくれる。たとえば、松田優作が目の前に現れたら、その周りは違う景色になると思うんだよね。ナンバーガールの存在自体が、だんだんとそういうものになりかけていたはずなんだ。美学に殉じた最期は確かに美しいけど〈美しすぎる〉とも言えるかな」

 ▼ ナンバーガールが愛した、お箸の国のROCKたち。

 
80年代を駆け抜けたファンク・ロック・バンド。向井秀徳はバンド解散後、PANIC SMILE、菊地成孔と江戸アケミ(Vo)追悼ライブに出演。
札幌公演でも触れられた、eatsern youth。2003年最新作。
同じく札幌でリスペクト発言されたbloodthristy butchers。向井秀徳曰く「コブシを振り上げたくなる勢い」
くるりのロック名盤。ナンバーガールはライブにてしばしば、アルバム中の「ワンダーフォーゲル」をカヴァーした。



センチメンタル過剰な対談 〜ナンバーガール解散に寄せて〜


アルバム一枚一枚に意味があって

久保田「それにしても、新作を出すたびにこれだけ更新を続けていったバンドは珍しいですよね」

北沢「そう、アルバム一枚一枚に意味があって、そのアルバムに好きな曲が入ってるからっていうことじゃなくて、ちゃんとその一枚を聴く必要性がある。意味合いまで含めて、個々のアルバムがちゃんと独立してるっていうのかな。そういう作品を産み出し続けていったバンドだったと思う」

久保田「振り返ってみると、ものすごく勇ましいバンドだったなあって思いますね」

北沢「ロックの本質って、世界と対峙して、それをひっくり返すってことにあると思うのね。向井くんは、そんなデカイことは言わないけど、やってたこと自体がそういうことのような気がする。それをギターで、爆音でやろうとした。やっぱ爆音出さないと負けるやろ、相手強いし、みたいな。とにかく闘ってる感じが良かったんですよね」

久保田「決して相手に背中を見せない感じっていうのはありますよね」

北沢「ライヴのMCでも〈自力を信じて……〉って言ってるけど、これは特にいま、いちばん重要なメッセージだと思う。それを知らしめるためにも、もうひとまわり大きくなってほしかったなあ。世の中が一目も二目もおくような……」

久保田「ロック・バンドといえばナンバーガール、みたいな。ロックなんて興味のない人でも、〈ロック〉と聞いてイメージするぐらい」

北沢「90年代後半にデビューしたバンドのなかでは、その域まで行ける可能性をもっとも秘めていたバンドだったと思う。だからこそ、これからが楽しみだったんだけど」

 ▼ ナンバーガールのロック更新記録。

 
地元・福岡にて録音された、メジャー・ファースト・アルバム。歌詞に見られる向井の視点、直線的サウンドから〈焦燥ロック〉とも称された。
その尋常ならぬパフォーマンスを封じ込めたライヴ・アルバム。ナンバーガールの魅力を即座に堪能できる〈ベスト盤〉とも呼べる内容。
エンジニアのデイヴ・フリッドマンによって、向井が描く妄想チックな世界観を見事に音像化させたアルバム。「TATTOOあり」における田渕ひさ子の必殺ギターは聴きモノ。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを彷彿とさせるスタジオ・ライヴ映像。DVDのみのボーナス・トラックでは、田渕ひさ子、アヒト・イナザワの歌唱も披露。





グループ魂/Run魂Run
ルミナス・オレンジ/Drop You Vivid Colours
ナンバーガール/NUM-HEAVYMETALIC
ナンバーガール/I Don't Know :映画害虫より
ナンバーガール/NUM-AMI-DABUTZ
/けものがれ、俺らの猿と



ナンバーガール オフィシャルサイト「狂う目」
(インタビューファイル)ナンバーガール <bounce.com>

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